2014年2月28日金曜日

Ⅱ-1 認知科学とは?

認知科学は20世紀の中ごろになって登場してきた学問で、比較的新しい分野です。
英語で書けばcognitive science. つまり、認知 cognitionを対象とした研究分野です。
心理学にも「認知心理学」という分野がありますが、認知科学の基礎には「心理学」はもちろん、「計算機科学」「脳神経科学」「言語学」「論理学」など、さまざまな学問が入り込んでいるので、広範な分野に対応しています。
ここで述べておかなければならないのは、心理学と認知科学の違いでしょう。同じ心を扱う学問ではあるのですが、その研究方法というか、スタンスというか、そういうものが若干異なります。
心理学では、人間や動物を使って何がどう起こるのかという実証的研究があくまでメインです。逆に、実証的研究で成り立たないものは、あまり信用されないし、どうでもいいとして扱われがちです。
これに対して認知科学は、そこからは1歩引いたスタンスで、システムとしての人間の1部分(モジュール)が何のためにあるのか、具体的なことについて計算機でシミュレートしたりして、理論を優先させます。
はっきりいってしまえば、事実や法則よりも、認知科学では理論が大事なのです
この認知科学を定義的にいえば「人間の精神機能・活動、その中でも推論や問題解決、意思決定、言語、さらには感情、音楽認知、美的評価なども含めて研究していく学問」ということになるでしょう。
ここに感情や音楽認知、美的評価があるのが特徴ともいえますし、また、特に思考や言語というジャンルの研究はものすごいものがあります。
こういう認知科学の最大のベースは「心は計算可能である」ということです。
ここでいう計算とは、「記号と記号」「イメージとイメージ」「知識と知識」など、幅広い意味で計算が可能という意味です。もちろん、心の中の抽象的なものが対象ですから、漠然なものであったりもしますが、言語なんかの場合、「主語 S+動詞 V+補語 C」(これは英語ですね)なんて形で結構見える場合もあります。
デカルトの心身2元論やホッブスの計算論などに認知科学はその源流を求めることができるのですが、このうちホッブスは「リバイアサン」という著作の中で、「考えることの中心は計算にある」ことをしっかりと述べています
そして、「推理(つまり、考えること)をする機械を作る可能性」が示唆されています。そういう意味では人工知能 Artificial Intelligence, AI 研究の先駆けともいえるでしょう。
またコンピュータ技術や通信技術の発達とともに、単純な思考ができるマシンの開発から始まって、たとえばさまざまなプログラミング言語の開発(LispProlog、そして今につながるオブジェクト指向型言語(CJavaなんか))やサイバネティックス(制御)理論、ゲーム理論などなど、さまざまなものが生まれ、そこに脳の神経モデルの考え方や、視覚の計算理論などいろいろな分野の研究結果みたいなものも加わって、今につながっています。

認知科学は本当に今、動き続けている真っ最中の学問です。ここで述べていることも、すぐに古くなってしまうかもしれないほどの動きようです。ぜひ、注目していっていただきたいと思います。

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